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| ブレイン-マシン・インタフェース最前線(1) |
『ブレイン-マシン・インタフェース最前線』の読後レポートを書こうと思う。 たぶん初めて知る人にとっては思ったよりも凄いところまで実現されているんだ、と感じて、すでにある程度知っている人にとっては思ったよりも課題が多いな、難しいな、と感じるだろう、という印象だった。 また、全体を通して、脳というのはもの凄く(物理的にも機能的にも)柔らかい組織で、常に周囲の環境に応じてダイナミックに変化していくという側面がメッセージとしてよく伝わってきた。 (後で述べることになるが、これはブレイン・マシン・インターフェースが正しく動くことを助けることにもなるし、一方で脳研究の難しさを一層困難にすることにもなる。) それでは早速内容に入っていこう。
ブレイン-マシン・インタフェース(BMI)とは
主な種類は、運動出力システム、人工感覚システム、脳内刺激システムの3つ BMIとは、機械と脳を直接つないで相互に作用させるシステムのことだ。 たとえば、自分の手足のように自在に操作できる義手や義足、「考えるだけで」動いてくれるスイッチやキーボード、あるいは麻痺した手足の復活などが可能になる運動出力システムだ。 あるいは、失われた(視覚や聴覚などの)感覚を機械からの信号入力で補う「人工感覚システム」や、失われた脳のある部位の働きを刺激して補う「脳内刺激システム」なども挙げられる。 このように、「脳からの信号を機械に送り制御する」だけでなく、「機械の信号を脳に送り込み、脳活動を制御し操作する」ことも可能な点がBMIを理解するポイントである。
手術が必要な侵襲式と、不要な非侵襲式 なお、BMIには主に侵襲式(直接脳などの神経に電極を刺す方式)と、非侵襲式(体の外から脳波などを観測する方式)の2種類があって、技術的な問題から現在は非侵襲式の研究の方が盛んである。 一方の侵襲式のBMIの方も、BMIの中心地であるアメリカでは力を入れて研究されている。 実際、アメリカではいくつか大規模な研究開発プロジェクトが始まっており、国防省も加わりながら人間への応用を目指しているようだ。
現段階でBMIはどこまで実現してる?
実験成果や臨床試験としては多数の成果が挙げられる。 1.運動出力型BMI 侵襲式 ラットが考えるだけでロボットアームを操作し、水を飲む 侵襲式BMIのパイオニア的研究として有名なラットの実験で、1990年代にChapin博士らにより実施された。 ラットは、レバーを押すことで水が乗ったロボットアームを自分の方に移動させ、水を飲むことができる環境にある。 そこで、まずラットの脳(の運動野)に多数の電極を刺し、ラットが水を飲もうとしてレバーを押すときに40〜50個のニューロンから発生する活動電位を記録する。 そしてそれを適切に処理することで、ラットがレバーを押す動作を予測することが可能になった。
 Wikipedia "Brain-computer interface"より 次に、レバーを押してもロボットアームが動かないように(水を飲めないように)する。 その代わり、ラットがレバーを押す動作を行うときの(先に記録したものと一致する)活動電位が発生したらロボットアームが動くようにした。 すると、最初ラットはレバーを押してロボットアームを動かしていたのだが、しばらくするとレバーを押さずにロボットアームを動かすことができるようになった。 これはラットがレバーを押す動作を想像していたからだ、と断定することはできないが、ともかくも頭の中でレバーを押すときに活動するものと同一のニューロン活動を発生させることができるようになったということになる。
BMIで繋がったロボットアームが、サルの腕の動きと同じ動きをする ラットの実験と同じChapin博士がヨザルに行った実験で、サルの脳(の一次運動野)に100個近いニューロンを同時に測定できるマルチニューロン記録システムを刺し、ロボットアームを操作させた実験である。 先のラットの実験と決定的に異なるのは、ラットはレバーを押す押さないの2値の選択だったのに対して、サルの方は腕の動きそのものをロボットのアームにさせたという点である。 つまり、サルが手元のレバーを操作すると、遠隔地にネットワークで繋がっているロボットアームがそれとほぼ同じ動きをしたということである。 この実験でわかったことは、運動野にある数千万のニューロンのうちたった100個程度の活動を測定するだけで実際の腕の動きを再現できるということだ。 つまりニューロンを一つ一つ測定してもあまり意味がなく、どうやら腕の動作を表す情報は運動野の中に広く平均化されて分散しているらしい、ということだ。
 Wikipedia "Brain-computer interface"より
ヒトがBMIでパソコンを操作する 上述のようなBMIはヒトの運動野にもすでに応用されており、頸髄損傷のため四肢麻痺となってしまったナジール氏が、96本の微小電極が並んだ装置(ブレイン・ゲイト)を取り付けることで、パソコン上のカーソルを「考えるだけで」動かしたり、テレビのスイッチやチャンネルを操作したりできるようになった。 ただしこのブレイン・ゲイトは有線で外部機器と繋がっており、感染症の危険が常にあるという欠点がある。
 Wikipedia "Brain-computer interface"より
非侵襲式 脳波BCIによって文章を入力する 筋萎縮性側索硬化症(ALS)という重度の身体麻痺を持つ患者さんの頭皮上2カ所に電極を置き、それぞれが検出する正電位(プラス)と負電位(マイナス)の組み合わせによりコンピュータカーソルを上下左右に制御させることで、簡易タイプのワープロを操作させ、長い文章を作らせた研究がある。これには2ヶ月近い訓練が必要であり、ワープロで書いたスペルの正答率も75%程度であるが、ALSの患者さんが意思表示できるという意味で画期的である。
筋電位で義手を操作する 筋電位は脳の神経活動を直接測定するわけではないが、筋収縮時の興奮電位を皮膚上で計測することで高精度に義手などのロボットアームを操作することが可能である。 たとえば、東京大学の横井研究室では、手首から先を切断した人の残された筋肉に筋電位センサを取り付け、その筋肉の動作でそこにつながれたロボットの指を動かすシステムを開発している。 この例では義手の方でも筋肉の動かし方を学習するシステムが組み込まれており、わずか1分ほどで、義手を自分の身体の一部のように操作することが可能になるという。
次回、感覚入力型BMIとして人工内耳や人工視覚、それからパーキンソン病などの治療にも使用されている直接操作型のBMI(脳内刺激システム)を紹介したい。
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